総量規制がない時代は債務整理ブームだった
元司法書士事務所で債務整理担当勤務だった時の話
私が司法書士事務所で勤務していた時の話です。
当時、過払い金請求や任意整理がブームのようになっていたので私は債務整理担当としてその事務所に勤務していました。
一人、とても高齢のおばあさんが依頼者だったのですがどうやらご主人が病気になってしまい、それから藁をもすがる思いで消費者金融のドアをたたきあれよあれよと言う間に複数から借り入れをする多重債務者になってしまったようです。
こんな高齢者の方でも借り入れができる?
今思えば、当時はそういったびっくりするくらいの高齢の方の依頼者が多かったように思います。
今は総量規制もあり、年齢制限もあり借り入れの審査はとても厳しくなっていますが、当時は割と簡単に審査が通っていましたし、こちらから増額申請をしなくてもわざわざ消費者金融側から「限度額を30万円から50万円に増額可能ですがどうしますか?」と連絡があったような時代です。
どうしますか?と言われれば、お金に困っていれば増額してしまうのが人間の心理でしょう。
きっとおばあさんもご主人が病気になり、最初は通院の足しや生活費の足しにと使っていたところ状況がかわり、今度は後受診が入院してしまったことで病院に通う費用や自分の生活が限界になって次々に借り入れしてしまったのでしょう。
全てを払えなかったおばあさんの気持ち
任意整理が進み、過払いしていた利息と差し引きしての支払交渉を得て無事に毎月の支払金額が決まりました。
司法書士とそのおばあさんのお宅に書類を持ってお伺いした時は、以前事務所に来られていた時よりもずいぶんと顔色が良く見えました。
司法書士が依頼を受任した時点で各消費者金融には受任通知が届きます。
受任通知が届いた時点で債務者へ催促の連絡などは、消費者金融などからは一切してはいけないことになっているため、静かな生活ができていたのでしょう。
気持ち的に安定していたようです。
それでも書類をお渡しする時に、おばあさんは司法書士に何度も頭を下げて「本当にご迷惑をおかけしました、本当にすいませんでした。」と謝るのです。
借り入れしてしまったのに、全ての支払いができないことをとても悪いことだと感じていたようです。
借りた方だけじゃなく当時は貸す方にも問題があった
司法書士が、これまで支払い過ぎていた利息があること、それを含めて今後の支払い額を決定したことなどを再度説明しました。
そしてその時、司法書士が言ったのは「無計画に借り入れをしたほうも悪いかもしれません。でも返せないと分かっていて貸すほうも悪いんです。」ということです。
おばあさんはポロポロと涙を流しながら「ありがとうございます・・・。」とまた頭を下げていました。
こういったケースが頻繁に増えたため現在では総量規制があり、年収の3分の1までしか借り入れができなくなりました
もしも総量規制以上に借り入れをしたいと思う人にとっては、邪魔に感じるかもしれません。
しかしこの時のおばあさんのような人が今後増えないために、総量規制はとても大事なことだと思います。
計画的に借り入れをし、賢く使うことが上手なやりくりだと改めて思いました。